リスク中立確率って競馬で考えると分かり易いかなと思ったのでメモ。
i = 1, \ldots, nに対するオッズがq_iだとする。つまり、i番目の馬券を買って当たると、1円がq_i円になって戻ってくるということ。以下、p_i := \frac{1}{q_i}とする。
今、\sum p_i = 1が成り立つとする。この時、馬iの勝つ確率がリスク中立確率p_iであるような世界を考えると、直感的に言って、そこはフェアな世界である。この世界をリスク中立世界と呼ぶ。この世界では、このレースにどんな戦略で臨んだとしても儲けの期待値は0である。リスク中立世界では裁定機会が無いのはもちろんであるが、馬の勝つ確率の分布がリスク中立確率と同値であるようなあらゆる世界にも裁定機会は無い。なぜなら、もし裁定機会があったならその戦略をリスク中立世界で実行すると、儲けの期待値が正になるからである。この議論から、「リスク中立確率が存在する \Rightarrow 無裁定」が分かる。

逆向きの議論を考える。\sum p_i > 1だとする。現実の競馬は胴元がテラ銭を取るので、この状況である。この場合、裁定機会があるのは明らかである。つまり、胴元になれば良い。これで、リスク中立確率を構成出来ることと無裁定性の同値性が分かる。

リスク中立確率の一意性と市場の完備性の関係を考える。馬が10頭いるのに馬券が「偶数番の馬が勝ったら当たり」と「奇数番が(ry)」の2種類しか無い状況を考える。これは、市場の完備性が成り立たない場合である。この時には、2,4,6,8,10の馬が勝つ確率を偶数番の馬券のオッズに合わせればよいので、リスク中立確率の選び方は無限にある。
逆に、リスク中立確率が1個しか無いとする。この時には、世の中をフェアにするためのオッズは1通りしかあり得ない。つまり、馬iの勝つリスク中立確率がp_iならオッズは\frac{1}{p_i}となる。これで、リスク中立確率の一意性と市場の完備性が同値であることも分かる。